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目の前に立つ男の漆黒の髪が空に舞う。
強い視線で鈴達を睨むその人はまるで―――――――、狂い咲きの桜のようだった。
「副長、死体の処理は如何様に?」
白い襟巻きを巻いた、男が鈴達に刀を向ける男に聞いた。
「羽織だけ脱がせておけ。後は監察に処理させる」
男が答えた。2人とも違う場所を見ていた。
と、もう1人の男が近づいて来た。
「それより、どうするんです?この子達」
近づいて来た男が隊長らしき男に問いかけた。
少しの間あけて男は
「屯所に連れていく」
と男は吐き捨てた。
「あれ?始末しなくていいんですか?さっきの、見ちゃったんですよ?」
男は何故か口元に笑みを浮かべながら問う。
「そいつらの処遇は、帰ってから決める」
(助かったの?)
鈴は安堵の息を漏らす。
その瞬間、何かが倒れる音がした。
どうやら、鈴の後ろにいる少女が気絶してしまったようだ。
彼女は気絶し、鈴はと言うとずっと下を向いていた。
「………運のない奴だ」
そう、聞こえた気がした。
――そのあとの事は、覚えていない――
分かることは。懐かしい声が聞こえた……ということだけ。
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