―二章―新選組

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視界がぼやけているが、はっきりと分かる。 淡い桃色の袴を着て、髪を高く結っている彼女だ。男装しているつもりなのだろうが、はっきり言って彼女の顔立ちが可愛いといった関連の物のため、女の子にしか見えないだろう。 目は伏せているが、その顔に疲労がありありと残っている。 昨日の出来事を思い返し、無理はないだろう。と思う。 せめて、もう少し寝かせてやろうと思い、弾かれた布団を掴んだ直後、もぞもぞと少女が動き、寝返りをうった。 閉じられた瞼が次第に開いていく。 そして、あまり時間は経たずに彼女は起きた。 「う~ん……あれ!!」 彼女は、起きたかと思えば、突然声を上げた。此処が何処だか分からないためなのだろうか。 「……どうしたんですか?」 鈴の存在に気がつかなかったのか、声をかけるとビクリと肩を大袈裟に揺らし驚いた。 なにか話しかけようとし、口を開いた瞬間、襖が静かに開いた……。 「目が覚めたかい?」 中に入って来たのは、温和な感じのする中年の男の人だった。 入って来ると同時に、申し訳なさそうにして謝る彼。 「すまんなぁ。こんな扱いで……。あぁ、総司の奴こんなにきつく縛ったのか」 痛かったろう、とため息をつく。恐らく、鈴に食い込んでいる縄のせいだろう。 「今、縄を緩めるから少しまっていておくれ」 男は素早く縄を解き、両手を緩く縛り直した。 すると、後ろにいた少女が恐る恐る呟いた。 「あ……あの……。ここはどこですか?あなたは一体…?」 「あぁ、失礼…。私は井上源三郎。ここは新撰組の屯所だ」 「新撰組……?」 新選組。それは鈴が歴史のなかで一番好きなものだった。そんな単語を聞き、つい心が跳ねてしまう。 少女は思わず「あっ」と言って井上から離れた。血に染まったあの羽織を思い出してしまったのだろうか。だとしたら、耐えられない恐怖だろう。
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