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「眠れたみたいだね。顔に畳の跡がついてるよ」
「えっ……!!」
少女は男の言葉で、頬を赤くし、顔に手を置いた。もちろん、彼女の頬に畳の跡なんかついてはいない。
男の嘘だ。
「よせ、総司」
彼の隣にいる白い襟巻きの男はたしか……斉藤さんだったような気がする……。新選組に関しては、幾らか知識があるのだし、井上にも色々と教えてもらった。
自分の知識とは違い、彼は前髪で顔の半分が隠れている状態だった。
「………からかわれているだけだ。跡など何処にもついてはいない」
斉藤がそう説明すると、彼女は顔から手をおろし、沖田をそっと見た。
「酷いな、一君。バラさなくてもいいのに」
男は悪びれた様子もなく言う。
そう言えば、この男は誰なのだろうか。
井上の話から想像すれば、この男が沖田なのだろうか。先ほども、斎藤から総司と呼ばれてのだから、あの沖田総司の可能性が高いだろう。
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