―二章―新選組

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「………ひどいのは斉藤さんじゃなくて、沖田さんの方だと俺は思うんだけど?」 鈴はわざと、「俺」と強く言う。井上の案内で廊下を歩いている最中思い出したのだ。自分は男装が、自慢出来ることに。 過去に一度だけ、学校の文化祭で男装をさせられたのだ。女子生徒には好評だったらしく、始めは嫌がっていた鈴だったが、ノリノリになってやっていた。 ここは武士が生きる幕末。女が迂闊に道を歩くことも出来ないのだ。だったら、男に扮していれば、いろいろと動きやすいのではないか。と勝手に結論ずけ、今に至る。もともと、男らしくする事は特技でもあったし、抵抗なく男装をすることが出来た。 「……おい、てめえら。無駄口ばっか叩いてんじゃねぇよ………」 男の呆れ返った声が聞こえ、沖田は方をすくめて黙った。 ……表情は、笑顔のままだが。それに沖田の後ろに黒い物が見えるのは、気のせいではないだろう。 恐らく、男はあの土方歳三なのだろうか。だとしたら、この人物も鈴の知っている土方とは大いに違った。
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