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「すまなかったなお琴。
確かにお前の優しさは短所ではあるが長所でもある。
現にこいつみたいにお前の優しさに救われている者もいる。
だが、使う相手を決して間違うな。」
「は、はい禄貴様・・・、大変恐れ入ります。何と申し上げればよいのか・・・。」
私の後ろで深く深く頭を下げているお琴さん。
私はくるりとお琴さんの方へ顔を向けてお琴さんの手を握った。
「私はお琴さんの優しさに救われました。
ありがとうございます。
何も、言わなくても良いんです。
それが良い時もあるんですから。」
「雛子様・・・。」
涙にぬれたお琴さんの顔、
対照的に笑った私。
私はまた立ち上がって禄貴さんに向き合った。
「禄貴さんは約束を守ってくれました。
どうぞ私をお好きなようにしてください。」
「雛子様!どうぞ禄貴様おやめくださいませ!」
覚悟の上だ。
こんなこと言えるのも、きっと現実逃避しているから。
私は内心怖がりながらも、それを出さずに禄貴さんの言葉を待った。
すると、
「ックク・・・思ったよりも面白い者を拾ったみたいだな。
雛子、お前を殺すつもりはない。随分肝の据わった女だ。ホラ、お琴お前はまだ仕事があるだろう。
雛子お前は俺について来い、六衛門様に会わせてやる。」
噴出したように笑って、私を見つめると心底楽しそうにしていた。
私はほっと胸を撫で下ろした。
そしてお琴さんは、私に頭を下げたまま、涙をこらえるような声で話した。
「雛子様、何と器量もよろしく寛大で御強い方でしょう・・・。恐れ入りました、このお琴、雛子様のためならたとえこの命を代えてでもお守りいたします・・・。」
「そんな大げさな。さ、お琴さん、仕事に戻りましょう。」
「はい、失礼いたしました。」
すす、と立上りまた一礼して去っていったお琴さんを見送って禄貴さんについていった。
「ごめんなさい、突然あんなこと言って。」
先ほどの行為はさすがに失礼だっただろう。
命の恩人に対してでも。
「何だ、随分強いことを言う割りには反省もできるのか。
俺としたことが面白い者を拾ったな。」
いまだに笑いを止められない様子の禄貴さん。
そんな禄貴さんを見て安心した。
しかし、これから城主に会うのかと思うと緊張してきて休まることができなくて静かにため息をこぼした。
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