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・・・そうしたら私は冒頭に述べたように森の中にいた。
片方落ちたイヤホンから流れるのは聞きなれた曲。
わけがわからなすぎて私はしばらくそこで停止していた。
シュッ
突然空気を切るような音と共にすぐ首の横に、冷たくて鋭利な物の存在を感じた。
驚きすぎて声も出ないまま私は動くことができずにいた。
鋭利な何かに切られ片側のイヤホンがなくってしまった。
「何者だ、答えなければ今此所で殺す。」
低く冷徹な男の声が耳へ入ってきた。
容赦なく彼は私を殺す気満々なんだろう。
もう驚きすぎて私の神経は鈍ったらしい。
いやに冷静に私の声が森に響いた。
「八乙女 雛子(ヤオトメ ヒナコ)。あだ名はハチ公、歳は18。高校に通ってて帰ってる途中迷ったらしくて気づいたらここに居ました。」
男は私の言葉を疑問に思ったのか聞き返してきた。
「八乙女だと?女が姓を名乗るとは・・・それにアダナとは何だ?コウコウと言う場所から来たのか?」
今時高校やあだ名がわからない人が居るだろうか。
だが答えないのであれば容赦なく殺されそうなので、
とりあえず話を続けた。「あだ名って言うのはほらか愛称とか別名みたいな感じです。
高校って言うのは学ぶ場所を指しています。」
鋭利な物が少しだけ離れて、首は一応動ける体制になった。
「寺子屋から来たのか。それにしては服装が南蛮人みたいだな。こちらに顔を見せろ。」
ゆっくりと振り返る。
でっかい馬。
その馬に乗っているのは逆光で顔がよく見えないが鎧のような物をまとった人物がいた。
「・・・何で鎧着てるんですか?」
その人は頭がいかれてると思ったのか、首から刀が退き、彼はまっすぐ私に目を合わせた。
「戦があるから鎧を着るのだ。お前は服装は可笑しいが日本人のようだな。・・・迷ったと言っていたな、その姿では目立つ。俺に着いてこい。」
馬の手綱を引いて彼は歩き始めた。
私は慌てて追いかけた。
「あの、お名前は?
もしかして助けてくれるんですか?」
少しの希望にかけて声をかけた。
「姓は篠田、名は禄貴。好きに呼べ。
敵でないと判断したから助けてやる。
だが怪しい行動をしたらすぐに殺す。
それだけは忘れるな。」
「あ、ありがとうございます。」
最低限の会話。
これが私と彼の出会いだった・・・-
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