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彼について行くとそこは大きな城を中心に栄えているいわゆる城下町のようなところに着いた。
さっきからなぜだろう。
ここは時代劇の撮影でもしているのだろうか?
日本刀のようなものをぶら下げて着物をまとっている男の人がちらほら。
やはり着物をまとって客引きでもしているのだろうか?
女の人がちらほら。
えっせ、ほっせ、と掛け声を言いながら籠を持って走っている2人組みの男の人。
時代劇でしか見たこと無い茶屋で看板娘と武士が話していたり。
・・・もう何なんだろうか。
ここはどこで私はどうしてここに来たんだ。
あのおじいさん、私をだまして違うところに案内したのか?
いやいや、そもそもあのおじいさんすら怪しい。
なぜ私はいつの間にか知らないとこに来ていたのだ。
やはり頭が追いつかず辺りを見回すことしかできなかった。
「・・・あまり目立ったことをするな。
ただえさえお前自身が怪しいのにあちらこちらを珍しそうに眺められればお前の怪しさが浮き彫りになってしまうだろう。」
禄貴さんはちらりとだけこちらに顔を向けてすぐにまた目線を戻した。
私はとりあえず言われた通り顔を下に向け禄貴さんについていくことだけに集中した。
・・・
しばらく歩いて禄貴さんがいきなり馬を止めた。
何だろうと目線をあげると、
「染野屋」と書かれた木札のようなものがあった。
「すまんが、三郎はいるか。」
禄貴さんは馬から下りてがその中へ入っていくので慌ててついていった。
中に居たのは紺色の着物に深い緑色の上着のようなものを着たおじさんがいた。
「これはこれは、篠田様。
今回はどのようなご用事でございましょう?」
何か胡散臭いその人はちらりとだけ私に目を向けてすぐ禄貴さんに媚を売るような笑顔を向けた。
「そこの娘がおかしな格好をしているだろう。
女物の着物を買うからこいつに着せてやってくれ。」
「はぁ・・・、これは確かに珍妙なお嬢さんですね。
おいと、おいとはいるか。」
私を舐めるように見て訝しげにしている。
そしておいとと呼んだ人を探して一度奥へと下がっていった。
「雛子と言ったか。お前の詳細はまた後で聞く。
とりあえず好きな着物を選べ、お前のその格好では六衛門様に会わすことも出来ない。
城主様にお会いできるような着物を選べよ。」
禄貴さんからの忠告も受け、さっそく私は色とりどりの着物を見ていた。
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