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城主様ってことは偉い人なんだろうなぁ・・・。
と、言うかなぜ城主と呼ばれる人が居るのだ。
今の日本は民主主義。人は一応皆平等社会となっているはずだろう。
ああ、もしかして私は江戸時代とか、戦国時代とか、本当の本当に時代劇じゃない・・・本当のその時代に来てしまったのではないか。
それなら納得もいくだろう。
私が言ったことは禄貴さんには伝わらない。
そして時代劇に出てきそうな城下町のような場所。
何より、城という場所に城主という主が居て、禄貴さんはその人に様、という敬称をつけて呼んでいた。
ああ、もう。
何でこんな目に合っているんだ。
私は着物を選ぶのも忘れて、仮定、もしくは想像としか呼ぶことのできない、しかし正確に辻褄の合う答えを見つけた。
「おい、まだ決まらんのか。
それとも金の心配か?
俺が出すから遠慮なく選べ。
早急にな。」
刺すような目の禄貴さんの目で私はようやく現実に帰った。
「あ、すみません・・・着物ってどんなの選べば良いのかわからなくて。」
滅多に着ないし最後に来たのは七五三の時。
そのときは母に選んでもらったから自分ではどれが良いのかわからない。
更には城主に会うのにふさわしい格好をしろという。
難しい問題だろう。
「着物を選べないとは・・・どんな生活をしてきたんだ・・・。
仕方ない、おい三郎。
こいつに合った高級な着物を探してくれ。
こいつを今から六衛門様のところへ連れて行く。」
おいと、と言う人と一緒にやってきた三郎さんに、また禄貴は話をした。
「はい、ご了承いたしました。
おいと、頼んだぞ。」
「篠田様のためなら何でもいたしますわ。さぁそこのお人。私についてきてくださいな。」
柔らかな物腰のおいとさん。
でもそれがやはり父親であろう三郎さんと同じく胡散臭い。
どうやら私はこの人たちとは仲良く出来なさそうだな。
そう心の奥で呟きながら、
靴を脱いでおいとさんに着いて行った。
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