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・・・
「城主様にお会いになるなんて何て羨ましい、それに篠田様と供にいらっしゃるなんて貴女とても羨ましいわ。」
「はぁ・・・」
嫌味にしか聞こえないおいとさんの話を聞きながら、私は朱色と金が散らばされた着物をおいとさんに着せてもらっていた。
華やかな帯を締め、その上から更にこれまた美しく装飾された羽織を着せられた。
裾を引きずってしまうほど、
分りやすく言えば平安時代の貴族のお姫様が来ていたような十二単のような格好になった。
この重々しい着物。
着慣れないから苦しい帯。
そして何十にも着せられたため歩きづらい。
でもこれだけ煌びやかでなければ城主様に会うことができないのだろう。
「ふふふ、どうでしょう。
見違える程美しくなりましたわ。さすが私のお父様がこしらえた着物・・・。」
おいとさん、嫌味はもういいですよ。
着物のおかげで美しいと言いたいのは分かった。
先ほどからの話といい、この人は私に嫉妬しているらしかった。
おいとさんはどうやら禄貴さんの想いを寄せているらしい。
そしてそこへ見知らぬ女を連れてやってきたというわけだ。
どうせ私は普通な凡人。
美しくなくても周りが望むならその通りにする。
それに禄貴さんは命の恩人のような人だ。
いつか恩返し、できれば良いなぁ。
そう考えながら、禄貴さんと三郎さんが居るであろう、入口へむかった。
・・・
「ほう、良かったな雛子。
思ったより似合っているな。」
にやりとニヒルに笑った禄貴さん。
これは別に嫌味でも何でもなく私をからかっているのはすぐに分かった。
「ありがとうございます。」
それでも禄貴さんに言われると恥ずかしくてぷいっと横に顔をそらした。
それにものすごい殺気がこちらにむいていて怖いよおいとさん。
化粧もしてもらい禄貴さんに買ってもらったそこの厚い下駄を履いた。
もはやこれ下駄?
何か私花魁みたいな感じになっている。
今まで来ていた服も持ち物も全て風呂敷に包んでもらい、
私は歩きなれない下駄を履きながら禄貴さんと供に染野屋を後にした。
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