質。

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ある日、そいつと話した時だ。 「こんなにボロボロになっちまって…… すまない、みっともないな。 新しく買い直してくるよ。」 「いらない」 「え?なんで……」 「これが、いい。 私は、これしか使わない。大事な物なの。」 ………修繕する費用も 相当かかったはずなのに。無駄じゃないか。 荷物も入りきってない。 パンパンではみ出てる。 なんで…… 「この鞄は、値段がつかない。」 そりゃボロボロだし、 売るには問題外だが…… 「お金では表現出来ないんだよ。」 ………? 「この鞄は、 他の鞄の知らない土地を歩いた。 風と大地の砂を帯びた。いつでも一緒に。」 「あぁ、長い事な。……それで?」 「わからない?」 「何が」 「この鞄も、大事な仲間なんだよ。」 ……なるほどね。
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