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「…お、おはよう…?」
僕は体を背(そむ)けたようにしながら言うと、その男の子は、
「今は挨拶どころじゃねーんだよ!!」
と、僕の胸倉を掴みながら言う。僕は驚いて目を見開く。
「大変だぞ!日比野!」
…どくん。
その時、僕は変な感じがしてたんだ――。
「きっ、如月がっ!」
胸を締め付けるような苦しい感じ――。これは胸倉を捕まれたからとかそういうのではなかった。
僕は早退するとのことで、学校から飛び抜け、一目散に走った。
…くそっ!体力さえあればっ!
僕は成績は良いものの、運動は昔から全くの駄目だった。ボールを使った競技は一番危険だった。何が危険なのかは言うまでもない。そんなんだから、いつも千鶴から「蓮は細すぎ。もうちょっと筋肉つけたら?」なんて言われてたんだ。
あいつの家は自転車で来る距離だ。僕の家より、ちょっと遠いくらいわかってる。けど、今は走らなくちゃいけない。……信じたくないんだ。だから走らなくちゃいけない。
「…はぁ…はぁっ…」
息が切れる。すごく、苦しい。
30分くらい走って、ようやくたどり着いた。さすがにここまで走ってきたのは初めてだ。
息を切らしながら、千鶴の家をまじまじと見る。相変わらず、でかい
家だ。二階に千鶴の部屋があるんだ。…でも…あいつは…。
あいつの家のインターホンを押そうとするけど、中からバタバタと足音や物音が大袈裟なくらい耳に届いて、僕は忙しそうなことを察すると、ガチャリとドアノブを回して玄関に入ってみる。たくさんとは言えないが靴が多い気がする。そして小声で「お邪魔します…」と言って、リビングまで歩くけど人が忙しそうに通るのを見て、僕も急ぎ足で歩いてしまう。
リビングに着いた僕は、目に映る光景に唖然とした。
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