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「倉・・・?」
裕志が訝しげに倉を見る。
しかし、倉は裕志の方を見ずに、何故かその後ろを呆然とみて
「人がいない・・・」
と呟いた。
「は?」
裕志は、倉は何をいっているんだと思った。
ほんの数秒前まで、溢れかえりそうなほどいた人が突然いなくなるなんてあり得ない。
裕志達が座っているテーブル席は丁度角の席で、裕志の座っている席からだと、店の中が見渡せない。
だから倉は、もしかしたら、色々と忠告がウザいと感じた裕志を驚かしてやろうと思ったのではと思った。
だから、裕志はヘラっといかにも馬鹿にした様な顔をして、
「何冗談いってんだよ。そんなんで俺が後ろを振り向くとでも・・・」
「イイからみてみろ!!」
グイ
「いでででッ!」
無理矢理首を掴まれて、身体を軸として首だけを動かされた裕志。しかし、その状態ではせいぜい90度だ。見れと言われても見えるのは壁だけで
「わかったわかったから!!」
無理矢理掴まれていた首から手を離させる
「まったく・・・倉はいっつも乱暴なんだよ」
はぁ、これ見よがしに溜息を吐きながら、椅子から立ち上がり、後ろを振り返る。
すると、そこには、大勢の高校生やOL達が
まったくいなくなっていた。
倉のことをかっこいい!といいながら、キャ~キャ~騒いでいた後ろの席の女子高生達も、店の入り口付近で上司や男の愚痴をしまくっていたOL達も、更には、店に絶対いなければおかしいはずの店員達も、まったくいなくなっていた。
数秒前には確かにそこに居たのに
荷物や、頼んだ商品をそのままにして
人が姿を消していた。
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