455人が本棚に入れています
本棚に追加
「言ってないからな」と茶化すオレ。
「水臭いよ!」と食い下がる亮。
亮が身を乗り出した瞬間にぐらつき、こぼれそうになったグラスを支え、「何が?」と訊く。
すると、「相談に乗るのに……」と冷静を取り戻しつつあるのか、身を徐々に引っ込める親友。
「おいおい、自分の恋愛がヤバいのに、オレのを手伝ってる暇あるのか?」
「ぐ……」
「ありがたいんだけどね、そういうのは自分の周囲を整理して、手持無沙汰な時にでも言ってくれ」
「なら、傾も自分の恋愛を優先すれば……」
「オレはね、亮の相談に乗った方が先なの。だからきっちりこの件を片づけた上で、そっちに集中するよ」
「ぅ、む……」
返す言葉も無いようで、黙り込んだ亮はコーヒーに口を付ける。
「とにかく、鈴の方に話を戻すぞ」
亮に続いてコーヒーを口に含め、話を戻す。
「っていうかさ、好きな人がいたらあっさり諦めきれるの?」
「ぇ……」
「さっきまでの口ぶりからするとさ、まるで、鈴に片恋相手がいたら大人しく身を引くような感じがするんだよ」
「……」
「どうなんだ?」
「…………諦め、きれないよ」
ポツリ、と。
確かに亮は言った。
気持ちを捨てる気はないと、暗示した。
「だったら、もう告白するしかないだろ」
これで亮が鈴に告白すれば、晴れて二人はカップルだ。
オレも前に進めてハッピーエンドだな。
そう思っていた。
しかし、世界はそう易々と思い通りにはなってくれないらしい。「でもね」
「ん?」
「最近、鈴ちゃんに避けられてるのも、あるんだ……。そっちは、どうしたらいいかな……」
おぅ、マジかよ……。
神妙な面持ちの親友を見ながら、重い息を吐く。
そういや、最近鈴が野球部の活動を見にいっているのを視認した記憶がない。
まさかとは思っていたが、鈴め……亮を避けてるな。
あいつの方にも一喝いれないと。
「もしかして、俺の好きな人ばれたのかな……」
「や、それはないな」
「なんで?」不安そうな表情でこちらを窺う親友は、既に涙目だった。
泣くなよ……。
「そういうことがあったら、相談してるよ。あいつは」
「そう、なの?」
「ああ。あいつが初めて告白された時なんか、夜中に部屋に侵入されたからな」
最初のコメントを投稿しよう!