日常

3/12
前へ
/200ページ
次へ
「なんで新入生のお前にそんな事を……。未来の方はどうなんだよ」 「さっそく男子達をうざいと思い始めた」 「そりゃまた」 「姉ちゃんも二年間こんなだったの?」 「まあね」 「うわぁ……憂鬱」 家族であるオレがこんな事言うのもなんだが、百合と未来はモテる。 鈴並みにモテる。 多分今の色彩の状況を表すなら、三年が百合、二年が鈴、一年が未来に魅了されている事になる。 器量の良さもあるが、我が姉と妹は嫌いな奴にも笑顔を振りまく。 その笑顔(偽物)に胸をズドキュンしてしまうバカが多いのだ。 鈴は素で、分け隔てなく接する。 何故かは分からないが、二人はやたらと鈴の事を嫌う。 まあ、今はそんなことどうでもいい。 「弟、早く食べないと遅刻するぞ」 「あたしたちもう行くからね」 「待て、オレもすぐ行く」 トーストをコーヒーで流し込み、ガムを口に突っ込む。 鞄を持って家を出ると、二人が不機嫌そうに立ち止まっているのが見えた。 「えっと……あっ、おはよう!」 百合と未来が睨みつけている相手――四宮鈴がオレに気付き、明るい声を出しながら手を振る。 「ああ、おはよう」 「弟、わたし達先に行くよ」 「どうせ兄ちゃん、四宮さんと一緒に行くんでしょ?」 オレの返事を待たずに、二人はさっさと歩いて行った。 「……私、なんで嫌われてるんだろ」 「…………さあな」 二人が鈴を嫌っている理由は、本当に皆目見当もつかない。 茜は知っているみたいだが……教えてくれようとしない。 「……とりあえず、いこっか」 「……そうだな」 気にしないようにして、オレ達は学校へ向かった。 ―――――――― 「あっ、野球部だ」 校庭が見えるところに差し掛かった時、鈴が立ち止まった。
/200ページ

最初のコメントを投稿しよう!

455人が本棚に入れています
本棚に追加