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"ハローワーク"の文字。
そう、俺はこの歳になって仕事に就いていない。
平日のこんな時間からパソコンを弄ってる時点でろくなもんではないのだが。
本当は八月の某日、
俺はとある中小企業で働くはず…だった。
「おにいなら大丈夫!ケーキ用意して待ってるから、初お仕事頑張ってきて!」
そう言いながら笑う妹の美穂。
人懐っこく、自分で言うのもあれだが
かなりのお兄ちゃん子だった。
美穂は明るく、運動も出来て勉強もできる。
クラスに一人以上はいる成績がオール5の子だ。
そんな美穂と対象的な俺は、
引っ込み思案で上がり症、運動音痴で友達が少なかった。
何故か小学、中学と虐められて
高校は進学しなかった。できなかった。
その頃はかなりの人間不信に陥っていたから。
でも、美穂に背中を押してもらったおかげか、
学歴を問わない、俺みたいのでも雇ってくれる会社に内定を貰った。
嬉しかった。
美穂は泣いて喜んでいた。
母さんも普段は疲れきったような顔をしていたけれど、その時だけ明るい顔をしていた。
父さんは額縁の中でいつも笑っていた。
俺は変わったんだ、
頑張ろう。そう決心した束の間だった。
初仕事の日だった。
その日は、曇り空で雨が降りそうだった。
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