引きこもりのヲタクのお話

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「母さん…」 病院に着いた時、 母さんは小さな背中を小刻みに揺らして嗚咽を漏らしていた。 「美穂…美穂…たすかんなかった…」 その言葉を聞いた瞬間、 何かがブツリと切れる音が聞こえた。 目の前がぼやけて、 熱いものがこみ上げて来る。 「があざ…があざん…」 顔が緩む。 その瞬間に涙が溢れ出て来た。 「あああああああああ!!!!」 止めどなく溢れて来る涙は、 新品のスーツに垂れて後を残した。 美穂の最後は見れなかった。 交通事故で、 身体がズタズタになってしまったらしい。 俺が見た美穂の最後は、 笑顔で俺を送り出す姿だった。 後に聞いた話だが、 美穂は俺のためにケーキを買いに行ってたらしい。 事故現場にうつ伏せる美穂に、 徐々に広がる鮮血。 形の崩れたケーキ。 事故現場にあったケーキは、 俺の大好きな苺のショートケーキだった。 それから、俺はまた引きこもるようになった。 仕事もやがてクビになり、 一日中パソコンを弄っては寝る生活の繰り返し。 母さんもあの日から元気を無くし、 気を病んでしまったのか よくリビングの方から奇声が聞こえるになった。 完全なる家庭崩壊だった。もう生きていても使用がない。 何回も自殺を試みたが失敗してしまう。 やっぱり苦しいのは嫌だ。 「隕石でも衝突すれば…楽に逝けるかな」 そう呟いてパソコンの画面に視線を移した。 予言あたんねえかな… 俺は無意識にそう呟いた。
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