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戦を終えて一息つく。
今から城に戻って勝った喜びを酒にぶつける。
毎回戦の後は宴会。戦っている最中はそれが楽しみだ。
城に近づくと、城下町は賑わっていた。
ふと目に飛び込んだのは見物人の少年だった。
「美しい…」
思わずそう呟いてしまうほどに美しいその少年に見惚れていた。
部下の一人が立ち止まった私を心配してきたが、邪魔をされるのも面倒だと思った私は
「先に戻っておれ」
邪魔者を退散させ、甲冑のまま、あの少年の元へ歩み寄った。
「そこの者」
3尺の距離で声をかけた。
「私でしょうか…」
「名を何と申す…?」
「成利と申します…」
成利と名乗った少年は近くで見てもやはり美しかった。
「わしをみてどう思う…?」
「お強くて、気高きお方だと…」
「それだけか…?」
「えぇと…」
きっと緊張しているのだろう。
彼の有名な織田信長様に話し掛けられているのだからな。
「私の小姓にならんか?」
「えっ!?」
これでは拉致が明かないと察した私は本題を告げた。
更に困惑したようだがこのくらい想定内だ。
「私事ながら父と兄は信長様の家臣をしておりまして、父は戦死しましたが、信長様に気に入っていただけたらお力になりたいと思っていたところです」
「そなたの父とな…?」
「はい、森可成といいます」
「あいつの息子か。ということは兄というのは長可か」
「えぇ、見物に来たのも兄の安否を確認しに…」
「そうであったか」
家族の事を覚えていたのが嬉しかったのか、笑顔が垣間見えた。
「早速だが、城へ来ぬか?」
「え?何もないのですが…」
「構わん」
手を引いて行くと抵抗もせず素直について来た。
「お帰りなさいませ、殿!」
部下がずらりと門の前で並んでいた。
先に城に戻れ、と言ったものの、城主である私より先に城に入るのは失礼に値することを教え込んだせいだろう。
「信長様、そちらの方は?」
「街で捕まえた小姓じゃ。大事にせい」
「ははぁ」
武器を持った血の気の多い輩を見たせいか、さすがの成利も言葉が出なかった。
城の自室で離してやると、成利は関心したように部屋を見回している。
「兄よりお側に置かれるのでしょうか」
「お主の働きによってはより近しくなるかもしれぬな」
成利は少し赤くなった。
酒の後は成利を頂くことにしよう…
酌を彼にしてもらうのもいいかもしれん。
楽しみが一つ増えた。
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