【起】

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その一言を引き金に、忘れ去られていた四季の恐怖が甦る。 そして次の瞬間、その声に引きずられるようにして、四季の意識は闇の中へと落ちていった。        * 土曜日、早朝。 窓から差す朝の日差しが、四季の目蓋をすり抜ける。 それに苦しむような声を僅かに漏らした後、四季は勢いよくその身を起こした。 そして大して思考を巡らせる事もなく、反射的に襖へと視線を向ける。 しかしそこにあったのは、きっちりと閉じられただけの襖であった。 半ば意外で、もう半ば当然の光景。 そんな光景に、四季は思わず安堵の溜め息を漏らす。 夢……だったのだろうか……? 昨晩見た、部屋の入り口に立つ少女の姿。 彼女が放つ雰囲気は、夢としか思えない程に澄んでいた。 だが、夢にしては随分と臨場感のあるそれであったし、その時は夢などではないと確信していた事もまた事実。 そんな正に夢うつつと呼べる現状が、四季を急かしたのだろう。 気が付くと彼女は服を着替える事もなく、立ち上がって部屋の外に飛び出していた。 目的は勿論、女将に少女の話を訊く事。 そして周りの迷惑も考えず、廊下を駆け抜けた四季が、一つ目の曲がり角を曲がった瞬間、偶然にも目的の人物が立ち塞がる。
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