【起】

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叫びながら両手をばたつかせる四季を見て、女将もただ事ではないと感じ取ったのだろう。 その後四季が言いたい事を一瞬で理解すると、実に柔らかな笑みを浮かべてから言い放った。 「あぁ、御客様、座敷童子を見たんですねぇ」 女将の放ったその言葉に、四季の脳内は凍り付く。 理解不能な現状にぶち当たった際の、典型的な反応としか言いようがなかった。 混乱という名の魔物が思考の一つも許さぬ中、四季の反応など意に介さず、女将は尚も言葉を綴っていく。 「いえねぇ、座敷童子を見た御客様は、皆そのような反応をなさるんですよぉ。だから御客様ももしかして、と思いましてぇ」 座敷……童子……? その言葉を受け、凍り付いていた四季の思考は徐々に取り戻されていく。 それはさながら、グラスの中の氷に、女将の言葉という名のぬるま湯を滴らせるかのように。 しかしある程度の思考が取り戻されたとはいえ、それが安心に直結する訳ではない。 座敷童子、即ち妖怪。 女将の言葉が正しいのであれば、それは昨夜見た者が、人外のものであったという事になるのだから。 素直には、信じられない。 いや、むしろ信じたくない。 座敷童子は幸福を呼ぶ存在としてありがたがられているが、実際目にしてみればこんなものだ。
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