【起】

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しかしそれすらも心地好い余韻を残し、やがては座敷童子の姿と共に廊下へと消えていってしまった。 なんだったのだろうか……? しかしそのような疑問が浮かんだところで、それが解決しよう筈もない。 やがて四季の脳は僅かな思考の末に、最も短絡的で、且つ最も納得のいく答えを導き出した。 「白昼夢……ってやつだったのかな……」 呟きながら、先程落としてしまった煙草を拾い上げようとした瞬間、四季の視界にはある物の姿が飛び込んでくる。 四季を不思議な世界へと誘う、紛れもない現実の証明。 それを見た四季の口からは、自然と呆れの色が混じったような声が漏れてしまう。 「……夢じゃない訳ね」 確信したくはないが、これが現実にある以上、確信せざるをえない。 ……四季の視界の先では、座敷童子が放った鞠が、どこか悲しげに照明の影を落としていた。
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