【承】

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何をしたらいいのか分からない。 今現在の四季の心境を表すなら、その一言に尽きるものだった。 煙草を口元にくわえ、窓際に立ち尽くしながらあの座敷童子が残していった鞠を両手で弄る。 この鞠が手元に残っている以上、座敷童子が現れた事は否定のしようもない事実。 だがその事実は四季に道筋を示すようなそれではなく、ただ悪戯に困惑させるだけであった。 しかし四季が困惑する理由は、それだけではない。 その根幹の理由となっているものを脳裏に浮かべながら、四季は上の空で呟いた。 「あの子は私に……何を見せたかったのかな……?」 そう、四季が困惑してしまっているもう一つの理由とは、不思議な闇の中で彼女が見た例の映像。 かつての日本で楽しそうに笑う、座敷童子に似た二人の少女。 タイミングから考えても、あれは座敷童子が見せたものとみて間違いないだろう。 だとしたら、あの映像はなんなのか? あれを見せる事自体に意味があったのか、或いはもっと深いところに座敷童子の目的があるのか……。 こんな事を考えてみたところで、四季にそれが分かる筈もない。 そんな事を考えつつ、窓際に置いた灰皿に煙草の灰を落とした時、四季の中には一つの疑問が浮かび上がる。
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