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他人の部屋に視線を這わすのは気が引けるが、それでも辺りを見回せば、帳簿等が散らばっているようだった。
ここは普段、女将が使っている部屋なのか……。
女将がお茶を淹れ終わり、机に置くと対面に腰を下ろしたのは、そんな事を考えている時の事だった。
「ごめんなさいねぇ、お待たせしちゃってぇ」
「あ、いえ……」
お茶をすすりながらそう言う女将に、四季は戸惑った様子でそう答える。
それは彼女が人付き合いの苦手な性格であるが故のものなのだが、今はそんな事を言っている場合ではない。
……気になる。
気になって仕方ないのだ。
あの座敷童子がどういった存在で、何を目的として自分の前に現れたのか。
……いや、普段の四季であれば、この程度の理由でここまで必死にはならなかったかもしれない。
ただ、調べなければならない気がするのだ。
上手く言葉に表せる感情ではないが、自分が調べなければならないような、そんな気が。
その思考に至った四季は、話す機会を設けてくださった女将に対する礼もそこそこに、早速話を切り出した。
「あの……これ、何か分かりますか……?」
言いながら四季が机の上に置いたのは……鞠。
座敷童子が置いていった、例の鞠である。
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