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女将は確かに、自分が座敷童子を見た事を信じてくれているのだから。
おかげでなんの滞りも無く、話を進める事が出来そうだ……。
それを実感した四季は、早速自らが訊きたかった話題を女将に振る。
「そういう事なら助かります。それで、あの……私以外に座敷童子を見た、って言ってた御客様は……」
「えぇ、沢山居ましたねぇ」
四季が言い切るより早く、女将は彼女が求めている答えを口にした。
あまりの即答ぶりに四季が言葉を失っていると、女将は尚も語り続ける。
「見た方が沢山居たからこそ、座敷童子が現れるなんて噂が流れてるんですよぉ。嬉々とした様子で話す方、目を丸くしながら話す方、色んな方が居ましたねぇ」
そこまで言うと女将はどこか悲し気な笑みを浮かべ、照れるように付け加えた。
「……まぁ、私自身は見た事無いんですけどねぇ」
そんな女将の言葉を聞き、四季は一人納得しながら自らの思慮の浅さを恥じる。
考えてみれば当然の事だ。
噂が流れている以上、誰かが座敷童子を見た事は確定事項。
その程度の考えには当然至っていたのだが、女将が客からその話を直接聞いたか否かは分からずにいた。
だが、客としては女将に訊かない筈がないのである。
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