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この旅館の事を一番よく知っているのは、間違いなくこの女将なのだから。
まぁ何はともあれ、他にも座敷童子を見た人が居るのなら、例の光景を見せられた人も居るかもしれない。
もし他にも私以外にそんな人が居たのなら、この言い様の無い不安も拭い去れるだろう……。
そんな考えに至った四季は、ここでようやく会話の核心を切り出した。
「あの、それでもう一つお訊きしたいんですけど……」
そこまで言ったは良いが、そこで言い澱んでしまう。
……正直、なんと説明したらいいのか分からない。
座敷童子が現れ、不思議な光景を見せられたと言っても、きっとこればかりは信じてもらえないような気がする。
かと言って重要なところを伏せて説明しても、それはそれで理解してもらえないような気も……。
そんな思考の渦に捕われている四季を見かねたのか、女将はここで遠慮がちに助け船を出した。
「はぁ、訊きたい事ですかぁ……。なんでしょう?」
その声を受け、四季の意識は現実へと引き戻される。
……まぁいい。
下らない事をいつまでも考える必要もない。
とにかく今は、適当な辺りから説明してみる事だ。
四季は自らにそう言い聞かせると、まずは当たり障りの無い辺りから口にする。
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