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「あの……そういった人達の中に、座敷童子から不思議なものを見せられた、って言ってた人は居ましたか?」
「……不思議なものぉ?」
女将の疑問も、尤もなものだ。
四季の問いは、あまりにも抽象的すぎる。
いくら信じてもらえないかもしれないからといって、これで用件が伝わるとは思えない。
だが彼女にとって、これ以上の言葉が見付からなかったのも事実。
女将の疑問に答える事はひとまず諦め、そのまま無理矢理に話を進める。
「いえ、別に大した事ではないんです。ただ、そんな事を言ってた方が他に居ないかと」
四季のそんな様子を見て、女将はまたお茶をすすると一言。
「何か……見せられたんですかぁ?」
当然と言えば当然なその問いに、四季は何も答える事が出来ない。
いや、答える事が出来ないと言うよりは、意図的に答えなかったと言った方が近いだろう。
言おうと思えば言える程度の事なのだが、あまりに現実離れした話である為、奇異の目を向けられるぐらいなら、と黙秘を決め込んでいたのだ。
無論そこには疑われる事に対する恐怖も若干は含まれている為、言えなかったというのも間違いではないのだが……沈黙は金。
言っても何か変わる訳でないのなら、言う必要もない。
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