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ただの偶然なのか。
あるいは何かの啓示なのか。
オカルトの類いを信じていない……いや、現状では信じたくない四季にとっては、前者である事を望むばかりだ。
と、その時、四季の隣から突如軽やかな鈴の音が響く。
まだまどろみから抜けきれていない意識のまま視線をそちらに向けた瞬間、四季の意識は一瞬で凍てついた。
そこに居たのは……膝を抱えて座り込み、満面の笑みでこちらを見据えている座敷童子の姿。
その表情はまるで、今しがた四季が見ていた夢の事を、見抜いているかのようだった。
しかし陽光の下で開く花弁のように可愛らしいその笑みですら、四季の驚愕を和らげるには至らない。
……まぁ、それが当然と言えば当然の事なのだが。
それでももし仮に、同じ人外でも口裂け女のような存在が隣に居た場合を考えると、四季の驚愕は現在の比ではなかっただろう。
そういった意味では驚く事に変わりはなくとも、少しはマシなのかもしれない。
この座敷童子という、人外の少女の存在は。
と、その時、座敷童子は依然笑みを称えたまま、四季に向かって口を開く。
「お姉ちゃん」
……その言葉を、四季はもう何度聞いた事だろう?
確かに彼女からしたら四季は年上であるし、確かに“お姉ちゃん”なのであろうが、そろそろ他の言葉を発してほしいものである。
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