【承】

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四季は彼女から渡されていた鞠の事を思い出すと、半ば無意識の内に自らの傍らに転がっていた鞠を手に取り、座敷童子の方へと転がしてやる。 すると座敷童子は鞠が手渡しで返ってこなかった事が不満だったのか、どこか悲しそうに目を伏せた。 しかしかと言って四季に何かしてやれる筈もなく、二人の間には重苦しい空気が漂い始める。 それは四季にとって苦痛と呼べる程のものであったが、それは座敷童子にとっても同じ事なのか、やがて彼女はまた満面の笑みを浮かべると、眼前の鞠を拾い上げ、それを幼い両手で掲げて見せた。 それはさながら、その赤い鞠を四季に見せ付けるかのように。 だが当然の事ながら、四季は依然反応を示せない。 どのような反応を示せばいいのか分からないというのも理由の一つなのではあろうが、やはり一番の理由は軽快であった。 初めて座敷童子を見た時に比べ、恐怖自体は和らいでいたものの、下手な行動を取る訳にもいかない。 なんだかんだ言っても四季の目の前に居るのは座敷童子……人外の存在なのだから。 「お姉ちゃん」 と、そんな時、座敷童子は再びその言葉を口にする。 四季がそれに対して肩を震わせた事などまるで意に介さないように、彼女の元にはまた新たな異常が降りかかった。
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