【承】

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具体的な事は何も分からないが、それはなんらかの惨劇が起きた事を確信させる景色だった。 惨劇の場は屋外なのだろうが、空や木々に血が飛び散り、場を恐怖に染め上げようとするかのようにそこにこびりついている。 しかしその景色を脳が受け入れた瞬間、四季は血は周囲飛び散っているのではない事に気が付いた。 まぁ“空”という空間にまで、液体である血液が付着する事など出来る筈もないので、それは至極当然の事なのだが。 ならば何故、空までもが紅に染まってしまっているのか。 その答えはパッと思い付く限りでは、一つしか浮かばなかった。 血はやはり、空に付着しているのではない。 この景色を見ている、あるいは見ていた“何者か”の目に付着しているのだ。 つまり四季が見せられているこの映像は、その何者かの視界を切り取ったものなのだろう。 視界の主は空を見上げたままピクリとも動かないが、これらの血は本人のものなのだろうか……? 視界を通して景色が覗けている辺り、絶命している訳ではないのだろう。 となると、出血により動けないのかもしれない。 と、その時、青と緑と赤だけで彩られた景色の中に、また新たな色が投げ込まれる。 “投げ込まれる”という表現は比喩でもなんでもなく、正真正銘に投げ込まれていた。
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