【承】

20/32
前へ
/93ページ
次へ
投げ込まれた色は茶色……土。 四季はこの時になって察したが、視界の主は今正に、浅い穴の中に埋められようとしているのだろう。 まだ息があるにも関わらず、回復する可能性を潰し、生きたまま冷たい土の中に埋められようとしているのだ。 その非人道的な行動に、四季の背筋は再び凍り付く。 穴の中からは土を投げ込んでいる人物の姿は見えないが、四季にとってはむしろそれで良かったのかもしれない。 そのような人物の冷徹な顔を見たら、四季は卒倒してしまうかもしれないからだ。 直感的によるものだが……この映像はいわゆるフィクションのようなそれではない。 端的に言えば、リアルな殺人。 そんなものを見せられれば、誰でも冷静ではいられないだろう。 と、四季の目の前に流れていた映像は、そこで唐突に終わる。 それと同時に周囲を覆う闇は白い光と混ざり合い、徐々に元の旅館の一室をかたちどっていった。 やがて完全に、景色は元通りのそれに戻る。 室内を照らす電灯。 使い古された畳。 そして……薄紅色の着物を纏った座敷童子。 四季は室内に視線を這わせた後、徐々に目を隣の座敷童子に向ける。 冷や汗を浮かべる四季の視線の先では、座敷童子は皮肉な程に柔らかな笑みを浮かべていた。
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加