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と、その時、四季は唐突に、且つ思い出したようにして声を張り上げる。
「そうだ……! あの人助けなきゃ!」
言うや否や四季は、場所の説明を求める視線を座敷童子に向けるが、座敷童子は俯きながら首を横に振るのみだった。
その反応を見ると、四季は警戒や混乱などすっかり忘れ、座敷童子に詰め寄ると声を荒らげる。
「どうして!? 早く助けないと、あの人本当に死んじゃうのよ!?」
「あれは」
と、実に静かな口調で放たれたその一言が、四季の荒い声を遮った。
弱々しいにも関わらず、よく響く不思議な声。
四季は一瞬、その声の主が誰か分からなかった。
しかしそれも当然の事だろう。
声の主は今まで、会話として成り立たない単語ばかりを放っていた“彼女”のものだったのだから。
その彼女が、今始めて受け答えとして成り立つ言葉を口にしていた。
それに気付くと同時に四季の心中には、再び警戒などの感情が甦る。
しかしそんな事など意に介さない様子で、座敷童子は付け加えるように呟いた。
「昔の事」
彼女の口から放たれたのは、またしてまたったの一言。
しかしそれは四季に全てを説明するには、充分過ぎるものだった。
あの映像は、過去のもの。
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