【起】

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まぁ人見知りする性格であるが故に彼女は一人旅を好むのだが。 「さて……」 四季は溜め息混じりに軽く呟き、荷物を部屋の隅に投げ捨てる。 その後壁際に腰を下ろすと、対面の壁に設けられた窓を虚ろな目で眺めながら思考を巡らせ始めた。 考える内容はズバリ、まず何をするべきか。 時刻は既に六時過ぎ。 コンビニですら車で十数分の距離なのに、今から観光地まで行っていたようでは帰るのが何時になるかすら分からない。 と、なると……観光地巡りは明日にするべきだろう。 しかし、ただ旅館に居続けるのも退屈としか言いようがない。 さて、どうしたものか……。 四季は思いあぐね、胸ポケットから煙草を取り出した。 それと同時に一瞬だけここで吸っていいものかと戸惑うが、部屋の中心に置かれた机、その上に置かれた物を見た瞬間にそれが杞憂だった事を知る。 机の上に置かれていた物は灰皿。 部屋が禁煙であるならば、こんなものは置かれていない筈だ。 それに気付いた四季は遠慮する事などやめ、灰皿にすぐ気付けなかった自分に対する自嘲の笑みを浮かべながら煙草を口へと運ぶ。 そしてそれに火を着けると、今日一番の深呼吸と共に有害な煙を吸い込んだ。
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