【起】

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暫くは思考する事もやめ、今現在唯一の嗜好品である煙草をたしなむ。 自らの呼吸に合わせて輝きを変える火元を眺めながら、四季は暫く呆然としていた。 しかしいつまでも呆然としていたようでは退屈極まりない。 四季は灰が畳に溢れぬ内に立ち上がり、机の元まで歩み寄ると一度灰皿に灰を落とす。 その後灰皿を手に窓際まで進み、外ののどかな風景を眺めながら再び煙草をくわえた。 風にざわめく木々……。 山並みに落ちる夕焼け……。 どこまでも澄み渡った茜空……。 こんな風景を眺めていると、世界のどこかで戦争が起きているというのが嘘のように感じられる。 それ程までに心休まる光景が、ここにはあった。 「来てよかった……」 四季はそう呟くと、短くなった煙草を灰皿に押し付ける。 さて、問題はこれからどうするかであるが……。 心を落ち着けた四季は、その事についても既に決めていた。 「長い運転で疲れたし……大分早いけど、今日はもう寝るかぁ……」 四季はそう呟くと大きく伸びをし、布団がしまってあるであろう押し入れへと歩を進める。 そして慣れた手付きで布団を敷き終え、部屋の電気を消すと早々に布団へと潜り込んだ。 時刻はまだ六時半。
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