始まり

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「じゃあね。また明日。。」 素早く身支度を整えた私は、挨拶もそこそこに教室を出る。 今日は部活の無い水曜日。 こんな日は、家の近くにある神社でまったりするのが日課だ。 学校が見えなくなった所で いつも、カバンの中に忍ばせている BABYTHESTARSSHINEBRIGHTのアクセサリーを身につける。 ○二つリボンの、黒いカチューシャ ○細身のリボンハングル ○うさくみゃモチーフの、ネックレスとリング 中古だけれども、やっと買いそろえた物だ。 財布や、携帯と一緒にロゴ入りのミニバックに入れて持ち歩いている。 高くて洋服なんて、夢のまた夢だけれどもいつか絶対に一式を揃えてみせる。 今は、小物を身につけていられるだけでも、幸せなのだから。。 3日前、やっと購入できたうさくみゃストラップと手鏡を抱きしめながら、急ぎ足で神社に向かう。 小さなころから、遊びに来ていたここは今になっても心落ち着ける場所だ。 去年海外へ移住した、幸子おばさんからは境内で「中原淳一」や「内藤ルネ」を教わり、代わりに私は「おおたうに」や「三原ミツカズ」を教えた。 以来、私のカバンの中には中原淳一の本とおおたうにの本が入っている。 「服飾に興味があるなら、出来る範囲で色んな物を見ると良いよ。」 中原淳一の本を、読み込んだ私を見て、幸子おばさんは言った。 誰もいない境内に座って、幸子おばさんの笑顔と一緒に昔よくここに来ては遊んでいた子を思い出す。 「いつのまにか、来なくなっていたんだよね。」 小学校の卒業間近、お母さんに聞いて見たけれどよくわからないと言ったきり何も答えてはくれなかった。 ただ、何となく聞いちゃいけない様な気がして黙っていたけれど。 「いけない!明日小テストだった!」 スカートをはたき、急ぎ足で階段を降りる。 暗くなりかけた境内は、怖い。 階段を降りている間、後ろから何かが貼りついてきそうで自然と走り出してしまう。 (早く帰って、準備をしなきゃ。) そんな事を考えながら、横断歩道を渡って居たとき、クラクションが激しく鳴り響いた。 (えっ?) それは、ほんの一瞬の出来事だった。眩しいヘッドライトが私を照らしたかと思うと、身体に強い痛みが走り私は空を飛ぶ感覚に襲われる。 (何?何? 夏休みには、バイトをしてBABYの服を着たかったのに。) そんな事を考えながら、私の意識は遠くなって行った。
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