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「ありがとうございます。本当に、助かりました。」
坂本龍馬と名乗る、男性に連れられて滞在先の寺田屋に身を置いてから数日、私は寺田屋の簡単な手伝いをしている。
龍馬とお登勢さんは、気にするなと言ってくれたけれど気が引けてしまう。
(不安になるくらいなら、馴染みたい。)
帰れるか解らないなら。。と自分なりに出した結論でもあった。
「陽子さん。いつも、おおきに。これ、少ないけどお駄賃。」
お昼迄に、一段落ついたある日お登勢さんからの申し出があった。
「ありがとうございます。でも、受け取る事は出来ません。」
「気にしなくて、良いのよ。陽子さんが、手伝ってくれるから助かるの。」
居させて貰っているからと、申し出たことで返って気を使わせてしまった事に私は申し訳無い気持ちでいっぱいになる。
「あの、それなら一つお願いがあります。。」
「お願い?出来る事なら何なりと。」
私は、お登勢さんの着物に目を落とした。
「着物一式を、貸して頂けないでしょうか?古い物で構いません。あと、着付も教えたください。恥ずかしい話ですが、着物を着た事が無いんです。」
こっちに来てから数日、龍馬と一緒に出歩くにしても制服は目立ち過ぎる。
郷にいれば郷に従え。
着物さえあれば、目立たずに街を歩けると痛感していた。
「いいですよ。それなら、ひるげが終わってから直ぐにでも、着付をしましょう。」
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」これで、最低限の自由が聞く。龍馬の足を引っ張らないで済む。
私は、嬉しさで一杯になった。
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