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「浴衣位は、着れるでしょ?」
「いえ。。自分で、着た事がありません。」
「なら、名前や着る順番も教えますね。楽しいわ。教えがいがあって。」
「よろしくお願いします。」
日も西に大分傾いても、中々コツを掴めない私にお登勢さんは根気強く着方を、教えてくれる。
「襟足の、中心を持って丁度半分に揃えて羽織ってください。」
洋服と違い、ほんの少し動きにくいと感じるけれど頭の上から糸に吊される感覚になる。
「陽子さんは、背が高いから裾揚げは少しで。つんつるてんになってしまうわ。。」
ようやく、コツが掴めて着ること自体が楽しくなってくる。
「衣紋は、拳一つ分だけ抜いて。抜き過ぎると、芸姑の着方になります。」
ようやく、腰ひもまでまくことが出来た所で、夕げの支度をするためにお登勢さんは片付けを始めた。
「今日は、ここまで。明日は、帯結びをします。」
お登勢さんが、下に降りてからも脱いでは着ることを繰り返した。
(綺麗に、着物を着たい。京の街を一人で沢山出歩きたい。)
ただそれだけの一心で、私は鏡の前に立つ。
「陽子さん。夕げが出来たぜよ。」
襖の向こうに立つ、龍馬の声にも気付く事無く私は着物を着続けていた。
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