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「今日は、いよいよ仕上げの段階ですよ。でも、昼間用事があるから少し遅くに。。」
あさげの手伝いをしていた私に、お登勢さんが忙しなく伝えた。
「わかりました!じゃあ練習してます!!」
始めてから、約10日近く。出来ない日もあったり、お登勢さんの都合で短い日もあったけれど何とか、自分でも暇を見つけては練習をしていた。
(絶対に、綺麗に着こなしたい。堂々と、幕末京都を自由に歩きたい。)
私は、あさげも早々に切り上げていつもと同じように部屋にこもり襦袢を羽織って、鏡とにらめっこをしている。
(うに先生のアレンジに、和服もあったよね。)
こんな時、自分の部屋と大好きな服と本の山が恋しくなる。
「陽子さん、ちょっくら池田屋に行ってくるけぇの。今日は、桂さんが来る大切な日じゃ。」
「はーい。桂さんに、宜しく伝えてくださーい。」
龍馬は、昼過ぎに外出した。
(行かれないのは、残念だけど着物が着れる様になれば、もっと一緒に出歩けるよね。)
一段と気合いをいれながら、まだまだ慣れない手つきで着物との格闘を続けた。しばらく時間が経った頃、用事を済ませたお登勢さんが、風呂敷包を抱えて部屋へ上がって来た。
「ただいま、遅くなって済みません。随分上手になりましたね。」
帯留め前の私を見て、お登勢さんが嬉しそうに言った「ありがとうございます!今日もよろしくお願いします!」
「まずは、前で帯を結んで・・・・。」
体の正面で、帯の形を作り、飾りの結びを整える手順は中々難しく何度も何度も失敗する。
「あまり、上で結ぶと苦しくなってしまいますよ。」 体と帯の隙間を頭にいれて、何度も帯と着物を直す。
(田鶴さんは、やっぱ凄いや。)
家の近所に住んでいた、田鶴さんを思い出す。
華道の師範で、小柄な体を山吹色の着物に包んでいたっけ。
しゃんと、背筋を伸ばし花包を抱えて生徒さんを出迎える田鶴さんの姿がより一層美しく脳裏に浮かぶ。
「コツを掴めば、直ぐに着られますよ。陽子さん、終わった後も練習を欠かさなかったでしょ?」
帯締めで、苦戦してる私をお登勢さんは励ましてくれた。
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