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「えー、ここはyとXを代入して…」
眠そうな目をした数学教師が、必死で式の説明をしている。
でも、尚は無視。
「ちょっと!尚?どうしたん?」
私は小声で前の席の尚に話しかけた。
「うん…。」
まだポケーっと窓の外を見ている尚。
「尚?」
「菊池。次の問題、答えろ。」
何かに気づいた様に私を当てた、ハゲ。
うーっ。
分かんない…。
「ほら!早くしろ!」
イライラしているのが喋り方で分かる。
「えっと…。」
ヤバい。ヤバい。ヤバい!
「ハゲの髪の毛は、どれだけ育毛剤を使えば、毛が生えるでしょうか?」
その時、隣の席の男子が笑いながら問題を出してきた。
「ハゲはハゲ。いつまでたっても毛は生えない。」
チャンス!と言わんばかりに、私は答えた。
「「アハハハハハハ!!」」
そのとたん、教室にわきおこる笑い声。
真っ赤になった、ハゲの顔。
「ごめんなしゃい…。」
そんな情けない私の言葉は、笑い声にかき消された。
パッと尚の方を見る。
尚は微動だにせず、まだ窓の外を見ていた。
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