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「・いっ」
虚ろな意識の中どこからか声が聞こえてくる
「おいっ」
意識が混濁した中でシンは目覚めた。
「んっ・・・?」
太陽の光がまぶしい。
気がつくと体の節々が痛い。
それでも声のあるほうに目を向けてみるとすらりとした長身の男が立っている。
腰には剣を下げている。
剣士なのだろうか?
「おいっ、大丈夫か」
意識の中をゆらりゆらりと不安定になりながら声の主のほうへと目を向ける。
何者かはわからないが、ずっとこちらを見つめている人物がいる。
太陽が目にまぶしい。
ここで自分は横たわっていることにかがついた。
地面に引っ張り寄せられながら、半身をやったのことで起こしたところで声の主に返事を返す。
「ああ・・・っつ・・・きみは?」
「俺か?俺はトトの村の警備隊のカイン。あんたの名は?」
「俺は・・・」
なぜか名前が思い浮かばない。それどころか考えようとすると体が激しく拒絶する。
それでも思い出そうと必死に記憶の糸をたぐり寄せる。
が
なにも思い出せない。
ゆっくりとそして今度は激しく首を振り、何か思い出そうとしたときひとつだけ頭に浮かんだ言葉。
「シ・・・ン。そうだ、シン、それが俺の名前だ!」
「シン・・・か、それで、こんなところで何やってるんだ。」
「俺は・・・思い出せない。俺はいったい・・・」
「思い出せないのか、しょうがないな・・・よし、それじゃ俺について来い。この辺も夜になると野犬やらが出るしお世辞にも安全とはいえないからな、村まで連れてってやる」
そう言うとカインは村に向かって歩き出した。
シンも遅れないようにそれについてゆく。
しばらく歩き、気がつくと村まで着いていた。
家がちりじりに規則正しくは並
んでいない。
何かおかしい。
自分が覚えているのはこんな風景ではないはず。
何かおかしいが、なにがおかしいのかそれすらもわからない。いったいここは・・・。考えようとするが無性に腹立たしいことに、考えがまとまらない。
そんな様子を見ながら、カインが言葉を発したときにはもう柵に囲まれた村の中へと歩みを進めていた。
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