『私』

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『私』

―その日私は死んだ……― ―そして、次の瞬間には「私」は私を産み落とす― ―異形……異様……― ―そうやって私の知らないところで「私」の命の連鎖は続いていた― 荒野と化した都会の荒地で、あちらこちらに爆発の炎が立ち上がる。 街灯のない真っ暗闇の最中、熱風が目を顰めさせ、その空気は酸素を奪い呼吸を蝕む。 炎に揺らめき、影なのか人なのかさえ分からない程の女達が、ほぼ1箇所に追い詰められひしめき合って居た。 灯など存在しない真っ暗闇の中、唯一の光となるのは月の光か、又は皮肉にも、燃え盛り、爆発する赤々とした炎だけである。 廃墟と化した街は崩れ落ち、ビルさえ見る影もない。 長い年月、舗装される隙もないアスファルトは地割れを起こし、所々國特有の赤土が剥き出しになり、雨の日など、ぬかるみ人々の足をとった。 そして“女狩り”と称される今日日、やはり赤土は人の邪魔しかしない。 爆発の所為で配管から漏れた水が赤土をぬかるみに変えていたのだ。 國特有の乾燥し渇いた空気に乗って舞う土埃や塵が、爆発と爆風に乗り喉の奥に貼り付くと、女達の乾いた咳を誘い喉を渇かす。 闇に視界を奪われた女達にとって、更に脅威を仰ぐのは容赦なく放たれる爆発と爆風のそれだけではない。 女達にとってのもう一つの脅威、自分達を追い詰め、大剣を軽々と振り回しながらすれ違いざまに斬り殺す男の存在であった。 爆風に紛れ、砂煙の中逃げ惑う女達をもろともせず、当たり前のように消し炭にしながら獣の如く走ってくるその無情な男はナインと呼ばれ、真っ赤な長い髪と肩幅のある長身が特徴である。 この街なら、そんな追っ手からも視界さえ奪われなければ、こんなにも人溜まりになり逃げ惑うことなど無かっただろう。 故、最初から逃げ道など塞がれ、街の人々は爆発により誘導されながら追い詰められていったに違いないのである。 そうでなければ悠に女は“女狩り”に遭わず、その人口を半分以下に激減させずに済んでいたであろう。
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