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―……。―
だが、やはり絶望の前の女には、話しも声も耳に入らず、伏せられ勝ちな目はセカンドやシックスをとらえる事は無い。
終始身体をこわばらせたまま、声をかける度に目を閉じ、ギュッと拳を握り締め土を掴んだ。
どの人間も同じだ。
おおかた念仏でも唱えているか、はたまた走馬灯でも見ているか、外の声など理解するほどには届いていないのだ。
「フゥー…… 参りましたね。
人間に念を使うのは初めてで加減がわかりませんが……」
そう言うとセカンドは女の姿をじっと見下ろし見詰める。
「聞いてますか?
貴女を連行致します。
総司令の命により、マザータワーまで御同行願います」
―ぅっ……。―
突然体中から男の子の声が聞こえ、それは体の中で反響し合う。
話は理解したが、初めての気持ち悪さに体をギュッと抱き締め、身震いを二度三度繰り返す女。
「うぅん、やっぱりちょっと加減が足りませんでしたか」
ため息混じりに眉を歪ませ話すセカンド。
困った様に頬を指で掻き、女を見詰めていた。
やがてシックスが痺れを切らし、強引に女に歩み寄り静かな声を掛ける。
「……行くぞ」
声と共にシックスは女の左腕をグッと掴み上に持ち上げた。
セカンドも気分を切り替え、キリッとした表情で女を見下ろし隣に立つ。
「行きます。立って下さい」
セカンドはサッと屈むと、女の右腕をグッと掴み上げた。
―…… 頼むからグレイ捕獲みたいに抱えるの、やめてくれない? ……自分で立つから。―
地に膝立ちのまま、女がゲンナリした絶望的な表情で、ノロノロと話す。
女は諦めからか、既に恐怖を感じて居ないようだった。
「? グレイ? 何ですか?」
思わずキョトン顔を浮かべ、セカンドは女に視線をやる。
「旨いのか?……」
シックスは隠密で人間の中に溶け込み、情報をかき集める事を得意とする為、人間と密接する食料へと思考が直結した。
―……はぁー。―
女は反論する気力をなくし、消え入りそうな溜め息を思いきり吐き出した。
「では掴まって下さい。
貴女方より走るのは速いですから」
話の謎もそこそこに、セカンドはノッソリ立ち上がった女を抱き抱え、何故か片足を一歩後ろに構える。
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