『私』

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―? !! ……。― 一瞬女は何が起きたのか分からなかったが、ただ、とてつもない風圧で息が出来ない事だけは理解できた。 確かに、セカンドと言う人形は、可愛らしい顔を何一つ乱す事なく走り、真上には先程の小柄な白髪の人形が、黒い羽を広げ翔んでいる。 女は絶望と恐怖と初めて味わった念と、何よりこのスピード感と揺れで気持ち悪さが込み上げた。 ―ッオエー……。― 当然体験した事のない感覚は、女の五感を敏感に揺さぶり、影響を与え蝕む。 「!!」 「?」 女の嘔吐に、思わずセカンドも驚き、目を見開いたまま急ストップをかけた。 急に足を止めたセカンドに気付き、シックスも上空から地上に足をつけ怪訝な顔で近付く。 セカンドはソッと女を地に下ろし座らせた。 女はまだ地にひんばりつき、身震いをさせエズキながら息を整えている。 「……」 セカンドに近付き、原因を目の当たりにしたシックスは、左目下辺りを痙攣させ、セカンドの背にベットリついてるものを見た。 「……ぁっぁー……」 消え入りそうに小さく声を漏らしているセカンド。 「どうする……セカンド」 静かな低いシックスの声が、呆然と眉を歪め立ち尽くしているセカンドに向け、発せられた。 「うぅんんーー。 スピード酔いなら眠って貰ったら感じないでしょうか?」 シックスは悩み呟いたセカンドの声に、そそくさと女の背後に歩み寄った。 ―かふっ ……。― 「かふ? ……!! あ、シックス」 微かに漏れた女の息に敏感に反応し、怪訝に振り向くセカンド。 シックスと女の状況を把握し、思わず驚きの声を上げた。 「……眠って貰った」 シックスは考え込んで居るセカンドをよそに、既に女の首根を強打し眠らせていたのだ。 冷静に彼は、何の悪びれもなくシレッと答えてのけた。 流石のセカンドも、やれやれと言った溜め息混じりに苦い表情を浮かべると、腕を組み声を出す。 「フゥ、全く……行きますよシックス」 「ああ……」
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