『私』

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ナインはやはり態度を変える事なく、柱に背をもたせたままわざと舌打ちを漏らしそっぽを向いた。 シド「セカンド。回復したシックスを連れ、女をここへ連行しろ」 セカンド「はい、お父上」 礼ごしに返事するセカンドに背を向けた山笠は、ナインに向き直りると、しゃがれた声をゆっくり発する。 シド「ナイン」 ナイン「お、おぅ……」 父に呼ばれると、コロリと表情を変え、微かに期待を込めた笑みで山笠に向き身構えたナイン。 シド「今回はここに残れ」 ナイン「な、何でだよ。 誰より女を殺った数は俺が一番だろ?」 その何の躊躇いもない冷徹な父の言葉に、まさかとナインは不服の苦い表情で反論し、身振り手振りを加え、声を大に主張すると父からの応答を待つ。 シド「……罰だ」 ナイン「!……」 シド「お前は勝手にイヴからチップを抜き取り、それだけではあきたらず、あまつさえ失くして帰ってきた」 ナイン「ク……そんな昔の事。 だってよ、あれさえありゃ、何処でだって回復が可能なんじゃねぇかって……」 眈々と視線を向けることなく話す山笠の言葉に拳を握り締めては、ナインは又身振り手振り苦し紛れに言い訳を口にしながら視線を外しうつむくと、一層強く拳を握り締め地を睨んだ。 サード「浅はかだな…… 私たちがイヴの中で回復出来るのは、イヴチップの力だけではない。 イヴの中に保管されている、女から採取し続けた羊水の力だ」 シド「もうじきファースト達もここに戻って来るだろう」 金髪の髪を又丁寧に撫で上げながら無表情で話すサードに向き直った山笠が、ナインの存在など忘れたように話すと、その山笠の背を目に、ナインの握りしめた拳が更に悔しさに震えた。 サード「父上殿、私共はいかに?」 サードはこちらに振り向いた山笠を見詰め跪き指示を仰ぐ。 シド「ふむ。 サード、エイトとイレブンが戻り次第、西のGフィールドを取り締まれ。 女がもし居たら今回は……」 サード「殺さず身柄を拘束、ですね?」 シド「うむ」 何の感情も見受けられない父の声の調子に合わせるように言葉を続け、静かに呟き確認をとるサードに頷き返答する山笠。 いつしかこの國は名をなくし、そしてイヴ研究体とし大量の女狩りを始めた。 その際に勃発した反勢力派との戦いは、イレブン'S Childrenにより弾圧され、多くの命の犠牲の上、都府県の名すら失うこととなった。 イヴタワーを西に、マザータワーを東に設け、東西南北を線引き大きくフィールドとし、Childrenは呼んでいる。 ナイン「チッ」
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