『私』

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やがてサードは、母を見つめるように優しい眼差しでイヴを見上げ、少し微笑むとその場を後にした。 ―南の地―Bフィールド かつては賑わい、大都会とし君臨していた筈のこの地も名を失い、今はただの廃地に姿を変えた。 「うわぁ、僕らが言うのも何ですが、酷いもんですね」 セカンドが可愛らしい顔を少し歪ませ、時々小さな咳をしながら、でもやはり何処か無感情に話す。 「ここは以前、ナインとフォースが殲滅した地だ……」 シックスが無造作に折り重なったコンクリートのゴミ山に片足を乗せ、瓦礫の影にひたすら目を凝らしながら話した。 隠密、単独をこなすシックスは、他のChildrenとは余り関わりあいがなくとも、キチンと任務内容や守備などは把握し理解している。 その必要な仲間のデータは他のChildrenより消去されることは少ないが、外の状況や都合の悪くなった時の流れのものに関しては直ぐ様リセットされてしまう事は少なくなかった。 このBフィールドは大都会だった故、瓦礫とも言いにくい木っ端微塵の樹やコンクリートは、風化しながらも山のように残り足元を邪魔する。 丸く角のなくなった細かなガラスがビーズのように転がり、鈍い光を反射させていた。 皮肉にも、この景色の中で美しいと思えるのはこれくらいだ。 広く栄えていた街こそ激戦区へと発展し、大きな爪痕が残されている。 「ふぅん……」 ため息に納得の声を乗せ発し、手を腰に辺りを見渡すセカンド。 自分達ほどの高さのものなどは一切存在しない。 見渡しやすさこの上ない。 「それでは、僕はあっちを見てきます。 この辺一帯宜しくお願いしますね、シックス」 「! ……」 そう言うとセカンドは微かにニコリとし、シックスを置き去りに瓦礫の少ない場所へと拠点を移した。 「……い、良い根性してるじゃねーか……」 左目を痙攣させながら遠ざかって行くセカンドの背を眺めた後、シックスは瓦礫の山に視線を移すと、取り残された様にボソッと呟いた。 「ふう、しかし、よくもまあ……」 苦笑を浮かべ呆れた声で、パンパンと服から砂ぼこりをはたき落とすセカンド。 「ナインらしいと言えば、ナインらしいですが」 セカンドという少年は辺りをぐるっと見回し、先程よりは見回しやすい大きな瓦礫の陰に目をやりながら歩き回る。
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