空白。

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 寒さで目が覚めてしまった。電気を点けたまま寝てしまっていたようだ。窓を見るとまだ外は暗い。時計は3時半を指している。  …寒い?まだ9月なのに?風邪でも引いたのだろうか。とりあえずベッドから降りよう。…上下スウェット。9月なら普通暑いくらいだ。しかし嫌に寒い。  カレンダーを見ると9月23日が丸で囲まれている。そう、昨日は俺の21回目の誕生日。友達と呑んで騒いで、終電で帰宅した。家に帰ってからは妙に孤独感に襲われたものだ。  カレンダーの下に写真が飾ってあるが、この写真には見覚えがない。家族写真のようだが、…誰の写真だ?写真には自分と同い年くらいの青年と、40代後半と思われる男女が写っている。背景を見る限り、場所はニューヨークだろうか…。  なぜこの写真が自分の部屋に飾ってあるのだ。気味が悪い。  寒いのは確かなのだが、9月にコートやマフラーなど出しているはずがない。押し入れにしまいこんであるだろう。押し入れを物色してみるか。  …押し入れには冬服がたくさん入っていた。とりあえず取り出したダウンジャケットを着て姿見で自分の姿を確認する。…それにしても9月の格好ではないな。  …視線を姿見に写った自分の顔に移した時言葉を失った。そこに立っていたのはさっきの写真に写っていた青年だ。…自分の知らない人間が自分としてそこに立っている。…俺は記憶を失ったんだ。混乱してこれ以上は頭が働かなかった。  10分程呆然と立ち尽くした後、頭を冷やすために廊下に出た。とりあえず動かないことには始まらない。  外は雪が降っていた。道理で寒いわけだ。  …いや待てよ、9月だぞ?どうなっているんだ?  うちは20階だから辺りがよく見えるが、今は暗くてよく見えない。少なくともこれだけは言える。こんな場所は知らない。なんとなく見たことはある気がするが、目の前に広がるこの町は間違いなく知らない町だった。  遠くのほうには賑やかそうな町がみえるが、近くには明かりがほとんどない、おそらくここは住宅街だろう。うちは住宅街にポツンと建つ高層マンション。他は一軒家ばかりだ。  しかし自分の家の構造は知っているのに、自分が住んでいる町、家族の顔、そして自分の顔さえも覚えていないのはなぜだ。病的なモノなのだろうか。  とりあえず家族に自分の異常事態を報告しなければ。
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