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「ご愛嬌……まあチミにはこの物件内容をご愛嬌の範疇(ハンチュウ)で収められるんだろうけど
私だったら見向きもしないね、素早くページをめくるよ、ボルトも真っ青なほどに」
私はとりあえずタイムリーネタで一旦区切ると
沈んでいた氷が少しずつ溶け出し、僅かながらに薄まったオレンジジュースをストローで吸い上げる
するとチミは私の世界陸上ネタに一切触れることなく、メロンソーダをすすりながら無言のジト目攻撃
おろろ、これはまずった
今回この物件を数ある中から厳選し、自分の意志で住居と決定づけたのは他ならぬ彼女
私には彼女の意向や考えを否定、あるいわ批判する権利など有りはしないのに
生存権すらあるのかどうか危ういのに
ここは何とか私のつんつる脳みそをフル回転させて、チミの機嫌を取り戻すフォローを弾き出さなければ
ええと、そうだな――――――
あ、よし
今のような劣悪な状況下を円滑に回避できるアノ方法で行こう
「あのねチミ」
「ん」
「さっきの否定的な意見は実を言うと、私の友達の親戚のお母さんのおばあちゃんの孫のお父さんの仕事先の部長が最近セクハラしてる女性社員の意見だかr「ばればれだよッッッッ!!」
ダメだったよタカシ
お前のせいだよタカシ、誰だか忘れたけどタカシ
「家賃4万、渋谷駅徒歩10分、9帖ワンルームの1K――――トイレ共同ゴバァ!!くっそゴバァ!!!ヤムチャしやがって………………………本当にええんかい?お嬢ちゃん」
尚も食い下がりの姿勢を見せる私にチミは、軽く息を吐き、どこかリラックスした様子で小さく微笑んだ
「心配してくれてるんだよね?ありがとう
でも大丈夫だよ、慣れない都会で色々上手くいかないこともこれから出てくるだろうけど自分なりに頑張るし
この新居だって住み続ければ可愛いもんだよ、きっと、"住めば都"ってね!」
ふむ
どうやら止める余地はないらしい
今チミが私に向けている決意の表情が、いかに無駄であるかと暗に力強く物語っているから
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