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これでやっと落ち着いて新生活が始められる
一人暮らしという単語にやたら緊張を覚えていた頃が今では懐かしい
新居の窓辺から差し込む陽射しを眩しく思いながら、一人、物思いに耽っていると―――
「こんにちはー!宅配便でーす!」
宅配業者の野太い声で意識が現実に引き戻されるのと同時に
チミは目をカッと開いて確信する
文明キマシタワー
「はい!喜んどぅー!」
居酒屋のベテラン店員も思わず真っ青な気持ちのいい……
いや、寧ろ気持ちの悪い返事を返し、満を持して赴く
「……あ、え…えっと、ここにハンコかサインを……」
すっかり精神的に舞い上がっていたチミは、宅配業者のドン引きリアクションなんて目も暮れず
指定された箇所にミミズのような筆記体を記し、どこか浮かない表情の宅配業者を見送った
地デジ完全移行まで残すところ、後三十分
日本の歴史的瞬間に一日本人として立ち会うことのできる重要な娯楽家電・テレビ
「ふふ、本当にアイツには感謝しないとね……今度お寿司でも奢ってあげようかな」
遠い昔
サプライズなど性に合わない、などとぼやいていた友人のことを微笑ましく思いながら
ガムテープで止められた段ボールを丁寧に開封していく―――
そして、そこに入っていたのは
「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ああ」
確かにテレビジョンだった
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