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数日後、恭子が何故か血だらけの犬仔を抱え、泣きながら帰ってきた。
「お兄ちゃーん、お兄ちゃーーん、うえーーん ヒッ ヒッ」
泣きじゃくる恭子が兄の助けを求めてやって来た。ロイは、ただならぬ恭子の叫びに駆け寄る。
「恭子、どうした!?」
すると恭子が、泣きながらロイに訴える。
「ワンちゃんがーー!仔犬がー!ウェーーーーン」
元々は真白であったであろう恭子の抱える仔犬は、血まみれで真っ赤に染まり、ぐったりとして衰弱している事に気付く。
「その仔犬、どうしたの?」
兄を見て少し落ち着いたのか、恭子の喋る言葉がまともになってきた。
「罠に掛かってたの。助けてきたの。」
するとロイは腰に手を当て、そんな恭子の行為を叱った。
「駄目だよ!そんなの持って来ちゃったら、大人に叱られるんだぞ!」
「だって、だって、可哀想だったんだもん。グスッ、ヒック」
「罠は、どうやって外したの?危険なんだぞ!」
「引っ張ったり、棒を突っ込んだりしたてたら取れたわ…」
恭子は泣きながらそう訴えた。叱られるよりも仔犬の命の方が大切だという心優しい少女なのだ。
「それで、キョンが怪我したらどうするんだよお…。でも、恭子に怪我がなくて良かった。」
ぶつぶつと文句を言いながらも、ロイは改めて仔犬を見て狼狽えた。妹の行為とはいえ、兄として、それを見捨てるわけには行かない。
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