第一章(1)

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  ありとあらゆる力の源。自然の摂理を生み出す精霊が住まう、精霊界。  人や動物、植物という多くの生命が溢れ、光に満ちた世界、地上界。  魔に属する者たちが暮らすとされている謎の多い世界、魔界。   それぞれの世界は、それなりの安定を長らく保っていた。    しかし、ある日……その均衡が破られた。    魔界から地上界に出現した『アウティルーガ』と名乗る魔族が、他の魔族やモンスターを引き連れて地上界を侵略し始めたのである。  やがて、その魔族を人々は『邪神』と呼称するようになり、人々はそれを恐れた。  邪神は世界を炎と血で染め上げ、人々は嘆き悲しみ、地上は荒廃する道を辿るしかなかった。    だが、その闇に染まり始めた世界に光が1つ生まれた。    その名はアーティア。人の世界で生まれたその者は、幼き頃から精霊の声を聞き、その力を自分のものとするという不思議な力を持っていた。  やがて成長したアーティアは、人々が邪神軍に苦しめられているのを見ていられなくなり、剣を持て立ち上がった。  精霊を己の力とし、人を守り、魔を退け、荒廃するしかなかった地上に希望という光を導き与えた。  しかし、邪神アウティルーガはとても強く、邪悪な力を持っていた。   それはアーティアの力を持ってしても打ち破ることは出来なかったほど。  アーティアは、それでも何とか地上に平和をもたらせるために精霊神ルシアの力を借り、邪神アウティルーガを『時の狭間』に封印することが出来た。    こうして地上に再び平和が訪れ、アーティアは人々から『勇者』と崇められることになる。  やがて、この戦いと世界を救った勇者の名を忘れないために、世界の名、そのものを『アーティア』としたとされている。   これが、この世界『アーティア』に伝わる、伝説である。        伝説が生まれて五百年ほどが経ったある日、平和な日々も突然終わった。    邪神アウティルーガが封印から解放され復活したのである。  人々は、勇者の血を受け継ぐ、アルバート王国とサフィルト王国の王が立ち上がると信じていた。  だが、勇者の国はあっけなく邪神軍に滅ぼされ、人々の希望だった勇者の血は途絶えた―――。  人々は絶望し、そして未来を失ったかに見えた。    だが……        八年後―――。
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