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春。もうすぐ中学校を卒業する。今日念願であったスマートフォンを買いに父親に携帯ショップに連れてこられていた。
世はスマートフォンブームだった。中高生から中高年までの憧れの品である。まさに現代科学の結晶と言っても過言ではない!うん!断言できる!
「どれにするんだ?」
もちろん狙い目はあったそれは Tー01C! 東芝富士通開発の高性能スマホだ!ワンセグ搭載に、お財布携帯、高画質カメラなどなど全部入りだ!
「すみません」
「はい?」
僕の父親が店員を呼んだ。
「これお願いします」
「かしこまりました」
色は悩んだがメロウボルドー。つまりピンクにした。
「では在庫確認してきますね」
僕は早くスマホを自分のものにしたかった。
中学の頃は携帯を買ってもらえなかった。友達がうらやましかった。でもそのおかげでスマートフォンを誰よりも早く手に入れることができる。
「よかったですね!最後でした!」
店員さんが箱を持って戻ってきた。
すべての手続きを得てショップを後にした。
「おい!」
「はい?」
ショップではさっき僕の接客していた店員が店長に呼ばれていた。
「在庫あったのか?」
「はい。ありましたよ」
「おかしいな・・・」
「?」「いやあ、今朝の在庫チェックでT-01Cはなかったはずなんだが・・・」
「え!?」
「どうせまた新人がへましたんだろう」
「そうですよね」
そんなことも知らず僕は期待を胸に家へ向けて走る車から外を見ていた。
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