第一章

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   登校時間、沢山の生徒が歩く中、リリアは僕の隣にやって来て言った。 「今日は寒いね」  見るとリリアは、マフラーも手袋もしていなかった。  しないのか、と聞くとリリアは笑ってこう言った。 「そこまで寒くはないんだよ」  そして、くるんと一回転して無意味にガッツポーズをしてみせた。  リリアのチャームポイントである花飾りのついたピンが、キラリと光る。  その発言と行動に、思わずクスリと笑いが漏れた。  華奢に見えるけど、意外と身体は丈夫なんだよなぁ。  にしても、そこまでじゃないって…少量ではあるが雪が降っているし、今のところ今年の最低気温と言われているのに。  僕が笑うと、リリアは不思議そうに僕の顔を覗きこんだ。  いつまでもジッと見てくるものだから、段々恥ずかしくなってきて、この空気に耐えられなくなりなんとか話題を振った。 「もうすぐ…卒業だね」  春から、リリアと僕は別々の大学へ通うことになっている。  一緒に居られる時間は、あと一ヶ月と少しだ。
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